重機の構造安全性の持続的な確保〜モニタリングの普及促進へ

「安全と健康」誌、2011年4月1日発行

プロフィール

  • 准教授 阿部 雅二朗 (あべ まさじろう)

1989年九州大学大学院工学研究科機械工学専攻博士課程修了、工学博士。同年長岡技術科学大学助手。同助教授を経て、2007年同准教授。専門は機械ダイナミクス、安全設計工学。ISO/TC96国内委員会委員長ほか

重機の構造安全性の持続的な確保〜モニタリングの普及促進へ

  • 重機の疲労破壊による倒壊

 省資源や省エネルギーは今後ますます重要となる。さまざまな工事現場等で使用される重機は、それらの健全性を維持管理しながら長期間使用されるようになる。この際、基本的に大切なのは「使用中にその破壊等による事故が発生しない」こと、すなわち「構造安全性の持続的な確保」である。長期間使用では、繰り返し荷重による疲労破壊に起因する事故が懸念される。破壊事故の約8割は疲労によるものと言われている。
 写真は、アースオーガ付き杭打ち機が、杭孔堀作業中に、その上部旋回体と下部走行装置を接合しているボルトの疲労破壊(破断)により、倒壊した事故事例である注)。

  • 荷重の予測・算定の重要性

 例えば、筆者が研究対象の一つとしている移動式クレーンのような重機について、近年の事故分析結果をみると、設計技術等の進歩に伴い、疲労破壊を含む構造部分の損傷や破壊による事故が少なくなっているようである。しかし、長期間使用のことを考えると油断は禁物である。
 重機がその試用期間中に破壊等しないよう、構造安全性を持続的に確保するためには、その構造部分に作用する力(荷重)による負担(攻撃)レベルより、構造部分の強度(防御)レベルの方が上回っている必要がある。
 設計者はこのことを設計段階、つまり「ものを作る前(事前)」に、試験や計算によって確認する。特に負担レベルについては、構造部分に作用する多様な力(荷重)の組み合わせを考えた予測・算定が重要となる。いろいろな工事現場等で使用され、使用者が代わることのある重機の場合、この予測・算定の正確性が求められる。合理的に予見可能な誤使用の考慮も必要となる。

  • モニタリングを活かした設計

 そのためには、重機の使用状況の正確な情報が必要となる。重機の使用者からの情報を活用できればよいが、使用者である人の記憶等に頼るのは不正確である。このため、機械から直接聞く、すなわち使用中の重機のモニタリングが合理的である。
 当然のことながら、使用者の許可が必要であるが、機械にモニタリング装置を備え、必要データを採取して現場での実情をより正確に把握し、負担レベルの算定精度が向上すれば、構造安全性の持続的な確保に寄与する。すでに実施されつつあるが、これは合理的かつ経済的なメンテナンスにも活かせる。
 ただし、モニタリングは監視されているようで、重機使用者にとって不快でもある。設計者(製造者)には、使用者への「インフォームドコンセント(正しい情報を得た上での合意)」を得るための説明が求められる。
 設計者(製造者)と使用者の両益のため、モニタリング装置の内容、精度、耐久性および取得データ使用方法等、そのあり方が検討され、普及促進されることが望まれる。

注)写真:杭孔堀作業中に、上部旋回体と下部走行装置を接合しているボルトが金属疲労により破断し、倒壊したアースオーガ付き杭打ち機(失敗知識データベースより引用)