地下送電線の爆発事故〜確実な作業手順の大切さ〜

「安全と健康」誌、2010年12月1日発行

プロフィール

  • 教授 福田 隆文 (ふくだ たかぶみ)

1979年横浜国大工学部卒、同年東洋電機製造(株)、1987年横浜国大助手。同講師、長岡技術科学大学システム安全系准教授を経て、2010年同教授。博士(工学)。IEC/TC44及びISO/TC130の国内委員会主査。

地下送電線の爆発事故〜確実な作業手順の大切さ〜

  • 送電線の絶縁油に着火し爆発

2009年暮れ、市道下に敷設されていた基幹送電線の工事中に爆発が起こった。マンホールのふたが吹き飛び、アスファルトが飛び散り、炎や煙が立ち込めた。幸い、この事故による人的被害はなかったが、鎮火には3時間半を要した。爆発事故は、工事のため送電を休止していた墓幹送電線に送電を再開した後、再度停止し、別の作業を行って2度目の送電再開時に起こった。
この事故の原因は、2度目の送電を行う前に残留電荷の放電を行わなかったことと推定されている。1度目の送電前には電荷の放電を行っていたが、2度目の送電前には、すでに行っているから不要と思い込んで行わなかった。このため、送電開始時に絶縁耐圧以上の過電圧が発生し、絶縁が破壊された。ケーブルが破損した結果、アークにより絶縁油が発火し、爆発事故に至った。
その後の対策として、操作指示伝票の中に残留電荷放電を確認することとその理由を記載し、さらに実施したことを確認しないと送電できないようにシステムを変更した。

  • 流体の残圧による事故

この事故は基幹送電線という特殊な場所で起きたが、通常の作業でも類似のことはないだろうか。設備内にあるコンデンサーの電荷もすぐにはなくならないし、電気だけではなく、油空圧機器の残留圧による事故も発生している。
油空圧機器の残留圧による事故は、①空調機の配管内の残圧により、取り外している最中の配管のキャップが突然飛び出し、作業者が吹さ飛ばされた事故、②オートクレーブ注)で残圧開放弁を開けた際の作動が不十分であったため、残圧のある状態でふたを開け高温液体が噴出した事故、③粉体輸送車のタンク上のハッチが解放時に残圧により急激に開き、作業者が墜落した事故、などさまざまな産業現場で起こっている。
機械安全設計の国際安全規格ISO12100(JlS B9700)では、動力供給を遮断したら可能な限り自動的に減圧させる、それが不可能なら減圧装置を設ける、等を求めている。作動中は加圧していることを意識しているが、停止中は圧力がないものと考えがちである。しかし、機械が停止操作後も惰性でしばらく回転し続けるのと同じように、残圧も必ずしもゼロとはならない。
このような事故をなくすには、停止すると残圧がなくなるような設計になっているか、それが無理なら残圧への警告がなされているか、加えて、手順書に残圧がないかの確認や残圧処理の実施が記載されているか、さらには、その手順の意味が理解され、守られているか(守っているか)、について点検することが大切であろう。

注)オートクレーブ:内部を高圧力にすることが可能な耐圧性の容器で化学反応や滅菌処理などを行う。