ジェットコースター脱線事故

「安全と健康」誌、2009年6月1日発行

プロフィール

  • 准教授 福田 隆文 (ふくだ たかふみ)

1979年横浜国大工学部卒、同年東洋電機製造(株)。1987年横浜国大助手。同講師を経て、2006年長岡技術科学大学システム安全系准教授。博士(工学)。IEC/TC44国内委員副主査。

ジェットコースター脱線事故 安全のための保全情報の重要さ

関西の遊園地で走行中のジェットコースターが大きく傾き、乗客20人が死傷する事故が発生した。この事故の直接原因は金属疲労により車軸が折損し脱線したことであるため、保全の大切さがクローズアップされた。それとともに、設計者から使用者に保全のやり方の情報が漏れなく示され、それを着実に行うことの大切さも示された事故である。これは。生産現場の機械・設備でも共通のことである。

  • ジェットコースターの車軸が折れ脱線

平成19年5月5日、関西の遊園地でジェットコースターが走行中に脱線し、1人が車体とレール左側の点検用通路の手すりの間にはさまれ即死、19人が重軽傷となる事故が発生した。6両編成で全長970mのコースを約2分で走行する立乗型のジェットコースターで、走行中に車軸が折れ、それが原因で車輪が落下し車体が大きく傾き脱線したものである。
車軸折損の原因は、その後の調査で、金属疲労と推定されている。事故車両は、通常年1回の定期点検を2月に行い、その際自主的に分解点検を行っていた。しかし、この年は2月の点検を先延ばしにして事故に至った。また、JISで規定する車軸の探傷試験を実施しておらず、車軸の交換も15年間行われていなかった。このため、この事故では、点検の内容や部品の交換の有無が問題とされた。

  • 使用上の情報の大切さ〜設計者は個別具体的な指示を

ISO 12100 “機械の安全性-設計のための基本概念、一般原則” 第二部には、設計者は附属文書により、点検の性質・頻度、熟練者に限定される事項、オペレータが実施できる事項など保全について明確に示さなければならないことが規定されている。つまり、保全に関する情報は、設計者から漏れなく伝えられることが求められ、もちろん、使用者はそれを忠実に実施しなければならない。
機械に必要な保全事項は機械の設計によって決まる。今回の事故にあてはめて考えても、検査の必要性や方法、周期は設計(車軸の形状や大きさのみでなく、車体重量や走行条件など多くのことが関係する)で決まる。よって、検査周期は設計の詳細が分からない使用者は決めることができない。したがって、ISO 12100では設計者にその情報を明示することを求めている。また、JIS等に規定されている検査であっても、設計者はその規格等を指定して実施を求め、必要なら条件(検査頻度、検査方式)を付加して伝えなければならない。部品の交換も、時期や判定基準を具体的に示すことが求められる。これは、この事故を契機にした調査で、車軸の探傷試験や交換が他の遊園地においても必ずしも実施されていなかったことからも、設計者からの情報伝達の重要性が分がる。
今回の例は、保全に関する十分な情報が伝えられ、それを着実に実施することの大切さを再度考えさせる事故であった。生産現場で機械・設備を新設・更新したときに、性能と立上げ(運転開始)に関心が集まりがちではあるが、日々の安全作業のためには、いかに保全するかが大切な情報であるので、よく確認すべきである。